カロン・セギュールはボルドー地方サン・テステフ村の最北端で生産され、74haの畑に美しいシャトー、ジロンド河の土手まで延びる広い庭園で構成されています。
1960年代以降は不振の時期が長く続きましたが、1990年代に入りマダム・ガクストンが亡き夫の後を継ぎエステートの経営をするようになってから、かつての名声を取り戻しました。
マダムは「賞を取れ、評論家に高く評価されるワインを造ることではなく、この偉大なワインを愛してくださる皆様に、飲んで楽しめるものを贈ること」という強い信念を元にワイン造りに取り組んできました。
凝縮感を前面に押し出したモダンなスタイルに変更していくシャトーがあるなかで、長年愛されてきたクラシックなボルドースタイルを追求するシャトーでもあります。 最近では、長く家族経営を続けてきたのに、保険会社にシャトーを売却するというニュースでも世間を騒がしたことは記憶に新しいかと思います。
その味わいは、しっかりとしたミネラルとサン・テステフ特有の芳醇なカシスの香りを持ち、非常にスムースな飲み心地で、信じられないようなまとまりがある。タンニンは濃く、しかし豊かな果実味で覆われ、独特の持ち味としなやかさを合わせもっている。力強さ以上にエレガントさが感じられる素晴らしい味わい。
日本ではハートの描かれたエチケットから、バレンタインデーの定番ワインとしても有名です。
855年の格付けで3級に格付けされているシャトーでありながら、19世紀の格付け当時から現在まで、ずっと同じファミリーが家族経営を保ってきたという、珍しいシャトーでもあります。
このシャトーを有名にしたのが「葡萄園の貴公子」とも呼ばれたセギュール候爵、ニコラ・アレクサンドルです。それまで、「サンテステフ・ド・カロン」と呼ばれていたこの畑を、18世紀にこのブドウの所有者であるジャン・ド・ガスクの娘と結婚を機に所有しました。
セギュール候爵は当時ラフィット、ラトゥール、ムートンなど、既に名声を博していた偉大なシャトーをいくつも所有していましたが、無名に近かったカロンの畑をこよなく愛しました。
「数あるシャトーを所有すれど、我が心、カロンにあり」
というセギュール伯爵の名言から、伯爵の名前とハートマークが、このワインに付けられました。